「布施(ふせ)」とはどんなこころか
仏教では「布施」という言葉が、自らの大切なものを惜しまずに他者に差し出す行為を意味しています。金銭や物品に限らず、優しい言葉や微笑み、席を譲る行動なども「布施」のひとつとされています。
この精神は、見返りを求めずに「ただ与える」ことに重きが置かれており、自我を手放し、相手を思いやる純粋な気持ちが根底にあります。
介護の場における布施の視点
支援の場面では「何かをしてあげる」ことが目的になりがちですが、布施の視点を取り入れると「この人にとっていま何が響くのか」「私にできる小さな差し伸べは何か」を考えるきっかけになります。
例えば、ただ声をかける、席を整える、そっと手を添える――こうした行為が心をゆるやかにつなぐ布施となり得るのです。
三つの布施:財施・法施・無畏施
布施には、物やお金を与える「財施」、教えや助言をほどこす「法施」、恐れや不安を取り除く「無畏施」という三種類があります。どれも相手に安心や尊重を届ける行為です。
支援側として意識できるのは「言葉で支える」「安心感を届ける」といった法施・無畏施の領域です。形式よりもこころのあり方が問われます。
布施する側のこころの成長
布施を実践することで、与える側もまた支えられる側と同じように学び、成長します。見返りを求めず、ただ「相手のために」という思いで関わることで、自己の執着や枠をゆるめることができます。
こうした姿勢が、日々の関わりを通じて自分自身のこころのケアにもつながっていきます。
支える関係を育むために
支援現場は、利用される方だけでなく支える側にも関係性の場です。「私は○○をしなきゃ」という義務感だけでは疲れてしまいます。布施の考え方を取り入れることで、気軽に「差し出す」「寄り添う」という選択ができます。
また、ひとりで抱え込まないためには、つながりを活かすことが大切です。気づきや思いを交換する場として、かいご姉妹サロンの「ひみつのお手紙(DM)」を活用してみましょう。
毎日の支援に布施の光を灯して
日々のケアの中で「何をしてあげたか」ではなく「どう存在していたか」を振り返ることが、布施の視点です。そして、小さな差し伸べが誰かの安心につながり、その回数が信頼を紡ぎます。
支え合う場を大切にしながら、布施の心をひとつの指針にして歩んでいきましょう。

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